バックトラッキング

催眠誘導で一番大切なステップは、実は誘導に入る前のラポールの形成だと言われます。ラポールの形成に役立つテクニックがいくつかありますが、その中の一つがバックトラッキングと呼ばれる会話法。 
「私の気持ちを理解して欲しい!」という欲求は人間誰しも非常に強く持っています。ですので、人との会話でこれが満たされると、その相手に対する信頼感は非常に高まります。
バックトラッキングというテクニックは、聞き上手になるためのメソッドです。何も難しいことはありません。ただ、相手の言葉をオウム返しにして相槌をうちましょう、ということです。
会話上手な人は、無意識のうちにすでにこのバックトラッキングをやっていたという人も多いでしょう。
ポイントは、自分で言葉を置き換えてしまわないこと。なぜかというと、会話の中の言葉一つ一つにはその人の気持ちが込められているからです。過去に異なる経験をしてきた人は、同じ言葉に対して結び付けている感情の種類や強さが異なっている可能性があります。言葉を置き換えてしまうと、その人の感情をそのまま受け取れない恐れが出てくるです。
このビデオクリップでは、バックトラックがいかに素晴らしいかを語るだけで、バックトラックとは何か、そのやり方までは触れていませんので、試しに自分でやってみます。

「話しやすいから、しゃべっちゃうんですよね、みんな。」
バックトラック:「へー、話しやすいから、しゃべっちゃうんだぁ、みんな。」
「みんなね、結構、2分くらいしかしゃべってないんですよ。」
バックトラック:「みんな、2分くらいしかしゃべっていないんですか?」
「でも2分とは思っていないんですよ。身体はもっとしゃべった感じがあるはずなんですよ。もっと、聞いてもらった感じがあるんですよ。」
バックトラック:「身体はもっと聞いてもらったって感じがあるんですか?」
「しゃべって、聞いてもらえたという充実感の感覚って、こんな数分でできるんですよ。」
バックトラック:「ほんの数分でできるんですかぁ。」
「たった2分でこの感覚が来るんですよ。すーっごくないですか、このバックトラキングって。」
バックトラック:「たった2分でその感覚が来るんですか。すーっごいですね、バックトラッキングって。」
「出来事は何にも覚えていないんですよ。私たちって、そのときどう感じたかを覚えているんですよ。」
バックトラック:「そのときどう感じたかを覚えているわけですね。」
「バックトラックを10分もやってたらもう中毒みたいにメロメロになって最高!って気分になりますよ。」
バックトラック:「10分で中毒ですか?バックトラックってメロメロに最高って気分になるんですか?」
「中身なくていいんです。」
バックトラック:「へぇ、中身はなくていいんですか?」
活字でバックトラッキングするのは難しいですね。オウム返ししているのが丸わかりですから。会話の中でさりげなく入れるともっと違和感がないです。
長い文章をそのままオウム返しにしたら当然、不自然になるので、そんなときは要約するか、一部分を繰り返せばいいでしょう。感情がこもっている言葉を拾うことがポイントです。
もちろん、自分がバックトラックをしたときの相手のリアクションをしっかりと観察しましょう。「そうなのよぉ!」とさらに強い反応が来るかもしれませんし、無反応かもしれません、「いや、そうじゃなくって、」とズレがわかるかもしれません。会話の中で試すと、相手の反応から、うまく行ったかどうかがただちにわかります。
わざわざ言うまでもないことでしょうが、相手に対する興味や関心、愛情がなくて、形式的なテクニックとして試すことは止めましょう。きっと見透かされてしまいます。人との会話に「パターン」を適用しよう、という発想がそもそも違っていると思います。
参考資料
Be a People Person – Establishing Rapport For a Better Relationship By Ruth Purple 
Rapport – NLP Builds Agreement In 5 Steps By Linda Ferguson 

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