金魚のトレーニングに学ぶ催眠術の掛け方

催眠術で人を好きにならせることはできますが、必ずしもそれが簡単なわけではありません。
難しい暗示を通すためには、被験者が受け入れることができる簡単な暗示から初めてじょじょに暗示内容をずらしていって、目的の暗示を受け入れさせるというテクニックが使われます。

この催眠術のテクニックは、アメリカの動物行動学者スキナーが発見したシェイピング(SHAPING)と呼ばれる原理と共通する部分があります。シェイピングは、動物が本来ほとんど起こさないような行動を、それに似た行動に対して報酬を与える強化学習を行うことにより、すこしずつ実験者の意図した行動に近づけていくものです。

例えば、金魚がこんな小さなプラスチック製の輪をくぐるということは普通あり得ない行動です。


このような行動を引き起こさせるために、シェイピングと呼ばれる段階的な学習が用いられます。

このためにどういうトレーニングを行ったかというと、まず、水槽の中に突っ込まれた杖が恐ろしいものではなく、餌をもらえるものだということを教えます。ちなみに餌を与えない限り、金魚はこの杖を怖がるか、または興味を示さないかのどちらかです。
次にその杖を追いかけるように教育します。
そして、その杖がプラスチックの輪の向こう側にあるときにはその輪をくぐり抜けることを教えます。
そうすると、体の大きさ程度しかないくらいに輪の大きさを小さくしても、金魚はそれをくぐり抜けるようになります。

本来ならこの金魚がこの小さいプラスチックの輪をわざわざくぐり抜けたりはしないのですが、トレーニングによってこのような行動を起こすようになったわけです。催眠術で使う暗示にもこれに似たところがあります。すこしずつ、すこしずつ、無理のないようにして受け入れさせていくのです。

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